肛門よりいづる者

真面目に生きてバカをみた

記事 創作落語「時牛丼」

今時分、色々忙しい現代人でございますが、自分の睡眠時間までも確保するため削りがちなのが食事の時間でございます。
本来食事はその食べる前の段階からじっくり時間をかけ、一生懸命美味いものを作り満足し眠りにつくものでございますが昨今の日本人は忙しく、コンビニなりお店なりでお手軽に軽くすませてしまうものです。
江戸時代も同じように忙しい庶民が使うファストフードとして、すしなり天ぷらなり様々ありました。特にその中でも蕎麦は人気でありまして、街の至るところにあり居候でも2杯までなら堂々と食えたという話がございます。
まぁ、現在で例えますなら、街のどこでもあり2杯まで食べてもお財布に優しいという点を考えれば牛丼屋あたりが妥当ではないでしょうか?

ちゃらららら〜ちゃらららら〜
「いらっしゃいませー、お好きなお席にお座りください。」
「はいはいはい(座る動作)」
「えーっとね、この牛丼並盛りくれるかな?」
「かしこまりました、ご注文繰り返させていただきます。牛丼並でよろしいでしょうか?」
「あー、いいねぇマニュアルとはいえ誰もいないのにちゃんと確認する。君はいいバイトだよ。」
「ありがとうございます。只今お持ちします。」
定員下がる動作
「いやー、ここも駅前だけどしっかり掃除もされてるしテーブルのキャスターもしっかり磨かれてる。こりゃ相当マメなやつが店を回してるに違いない、いや何酔っ払ってるわけじゃない、寂しいおっさんの話を若い子に聞いてもらいたいだけだ。」
「はい、すみませんこちら牛丼並みになります。」
「いや、早いねぇ。実に早いよ、この忙しない現代社会でも顧客のニーズに合わせてかなり早いね。素晴らしいよ。」
「うーん、そしてこの牛丼もなかなかに上手いねぇ。この時間帯ならクシャクシャになってる玉ねぎもしっかり火が通りすぎずシャキッとしてるよ。」
たべる
「いやー美味かったよ兄さん。お会計お願いね。」
「ありがとうございます。こちらお値段が380円になります。」
「いやー、ありがとね。とりあえず細かいの出すから手を出してよ。」
「かしこまりました」
「(かぶり気味に)じゃあ、百円玉が一枚二枚、そういえばここはいつも何人働いてるんだい?」
「あ、はい三人ですね。」
「そっかそっか、じゃ四枚と釣り入らねぇよ。じゃあな」
「ありがとうございました!」

これをバイト帰りに死んだ目をして見ていた貧乏学生の山下は一枚ちょろまかしたおっさんの手腕に一目惚れ、こりゃあ自分もやらせていただき浮いたお金でモヤシでも買って家庭の足しにしようと考えたわけであります。

そして次の日
ちゃらららら〜ちゃらららら〜
「いらっしゃいませ、空いてるお席にお座りください」
「はいはいはい、って今日はやけに混んでるな。それも頭の色の明るい学生ばっかりじゃんか、あ、そうか今日は金曜日だ。」
いやー、これは昨日とはちょっと違うなぁなんて思いながら呼び出しボタンをピーン
「はい、お伺いします」
「あー、この牛丼並でお願いね。」
「かしこまりました。(帰る)」
「あらあら、繰り返さないと、まぁ忙しいからね。しょうがないねぇ。」
「まぁ、しっかり掃除の行き届いた店だからねぇ、定員も忙しいんだろう…って思ったけどなんだよこの席の横のゲロ片付けてねぇじゃねぇか。流石に忙しいからって飯空人の前にホカホカのゲロおいてんじゃねぇよ!」
「はい、こちら牛丼並になります。」
「あ、流石に提供は早いねぇ。うーんこんだけ早いのも…って話も聞かないで帰っちゃったよ。」
「まぁ、しょうがないねぇ。あららねぎもヘナヘナだよ。肉も全然ないし、何だいこの店は」
「あー、もういい、お兄さんお会計お願いね。」
「はい、畏まりました。お会計380円になります。」
「あー、ごめんね。細かくなるから手ぇ出してよ。」
「いやー、お客さんちょっと店忙しいんでできれば勘弁してくれないですか?」
「何言ってんだてめぇ!てめぇはマニュアルに従ってりゃいいんだよ」
「はい、すみません」
「じゃあいくぞ、百円玉が一枚二枚」
「ところで今日は何人で店回してるんだい?」
「はい、一人です」
おあとがよろしいようで。